2023/07/21 15:20
日本お米ばなし vol.24 栽培編「無農薬という表示は安心安全?」
マルシェや直売所などでたまに出会う「無農薬」「無化学肥料」といった表示ですが、実はこれ、要注意です。
今回は、正しい表示についてご紹介します。
有機農産物とは
農林水産省のホームページから引用すると、有機農産物とは、
1. 周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている
2. は種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない
3. 組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない
など、「有機農産物の日本農林規格」の基準に従って生産された農産物のことです。
この基準に適合した生産が行われていることを第三者機関が検査し、認証された事業者は、 「有機JASマーク」を使用し、有機農産物に「有機○○」等と表示することができます (逆に、認証を受けていない農産物に「有機○〇」等の表示を行うことはできません)。
自然農・自然農法・自然栽培の農産物
農薬や化学物質を使わない農産物を探している方は、自然農・自然農法・自然栽培といった農産物にたどり着くかと思います。
それぞれとても簡単に説明すると、以下のようになります。
(1)自然農
川口由一さんが提唱した農法。
特徴:不耕起・農薬不使用・肥料不使用
(2)自然農法
著書「ワラ一本の革命」で有名な福岡正信さんや、宗教家の岡田茂吉さんの提唱した農法。
特徴:不耕起・農薬不使用・肥料不使用
岡田茂吉さんの提唱したMOA自然農法では、植物性堆肥の活用は推奨されているようです。
(3)自然栽培
提唱者や明確な定義はない。
特徴:耕起する・農薬不使用・肥料不使用を基本とするが自然由来の肥料は使用する場合もある
ただし、これらの農法にはなぜそれを良しとするのか背景となる思想があるため、特徴を知っただけでは理解が浅いと言えます。
では、これらの農産物で有機JAS認証を取得していない場合、農産物の扱いとしては何になるのでしょう?
下図は、農産物の名称とそれを定める法律やルールを簡単にまとめたものです。
たとえ、「自然農・自然農法・自然栽培」といった、有機農産物よりも厳しい基準で作った農産物だとしても、有機JASを取得していなければ、現行のルールでは「特別栽培農産物」に分類されることになります。
特別栽培農産物に係るガイドライン
特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、地域で一般的に使われる節減対象農薬と化学肥料の使用をそれぞれ半分以下にして栽培された農産物を対象とします。
そして、「無農薬」「無化学肥料」 等の表示は、優良誤認を招くことから、表示禁止事項としています。
農業の特性上、たとえ農薬や化学肥料を一切使用せずに栽培した農産物でも、水源や土、雨などの自然環境中での混入が全くのゼロということは困難であるため、「無農薬」「無化学肥料」といった表示は禁止事項となっているのです。
直売所やネット広告などで「無農薬」「無化学肥料」といった表示を見つけることは意外と多く、生産者自身がルールを知らないか、マーケティング上承知の上で使用しているかのどちらかが考えられます。
どちらにしても、買い手側からすると信頼性に欠けますので、当店ではそもそもお取引の対象になりません。
まとめ
有機JAS認証を取得していないけれど、農薬や化学肥料を不使用で生産している農産物は、「特別栽培農産物」に分類されるため、ルールとして「無農薬」「無化学肥料」の表示は禁止されています。
おわりに
農産物の表示は生産者でも間違えるほどにわかりにくい現状があります。さらに悩ましいのは、少しでも多く販売するためにあえてルール違反をしているのか、知識不足で誤表示をしているのかわからないところです。
そのため、安心安全な農産物を選択する方法として、消費者も自分で判断ができるくらいの勉強が必要になっています。
私たちはナチュラルな米屋として、自然農・自然農法・自然栽培のお米にも独自基準を設け、「農薬・化学肥料・家畜由来の堆肥」を不使用のお米だけを現地調査まで実施してお取り扱いさせていただくことで、真面目なものづくりに取り組むつくり手を応援しています。