自然栽培米・有機栽培米専門店 Natural Farming

2024/05/21 12:00

いま、お米業界では、放射線育種について注目が集まっています。
2025年から秋田県が主力品種「あきたこまち」を重イオンビーム放射線によって遺伝子を改変した「コシヒカリ環1号」との交配種、「あきたこまちR」に全量転換する予定だからです。
これは、人体の健康に影響を及ぼす恐れのある「カドミウム」を吸収しにくい稲品種への切り替えを目指し、全国で進められようとしているものです。

そもそも、放射線育種とはなんでしょうか?
ということで今回は、放射線育種についてご紹介したいと思います。

「カドミウム低吸収性イネ」とは

近年、既存の品種を突然変異させ、土壌中のカドミウムを吸収する量が少ないイネ(カドミウム低吸収性イネ)が育成されています。
カドミウム低吸収性イネは、その生育、収量、食味、病害抵抗性が既存の品種と同等ですが、コメ中に含まれるカドミウム濃度が既存の品種と比べて大幅に低くなります。

なぜ「カドミウム低吸収性イネ」が必要なのか

日本では、過去の鉱山開発等の結果として、カドミウム濃度の高い地域が存在しています。そして、 日本人の食品からのカドミウム摂取量は、他国に比べてより高い傾向にあることがわかっています。
日本では、食品衛生法に基づくコメ中のカドミウムの規格基準が「0.4 ppm(mg/kg)以下(玄米、精米)」に設定されていますが、これは他国に比べて高い基準となっています。
特に、コメを輸出する場合、各国や地域が定めている国内又は域内基準を満たす必要があること等の理由から、コメ中のカドミウム低減対策の重要性が高まってきています。

カドミウムは、全国の土壌に普遍的に存在する重金属ですが、日本では、土壌や降雨の特性から、土壌中のカドミウムが溶け出しやすい環境にあります。また、廃鉱山に含有されているカドミウムや、鉱山や精錬所などの産業活動によって排出されたカドミウムが、大気や河川を経由して、一部地域の農地に蓄積したこと等により、農地土壌中のカドミウム濃度が高く、さらにはカドミウム濃度の高いコメが生産される可能性の高い地域が存在することが問題となってきました。

具体的な健康被害としては、一定量以上のカドミウムを、食品を通じて数十年にわたり継続して摂取し続けると、腎臓(近位尿細管)の機能に悪影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。

3つのカドミウム低減対策

コメ中のカドミウムを低減するための生産段階での実行可能性が高い対策として、下記の3つがあります。

①「カドミウム低吸収性イネの利用」
カドミウムをほとんど吸収しないイネ品種に置き換える。

②「湛水管理を中心とする吸収抑制対策」
土壌の酸化還元電位等のコントロールによって水稲による土壌からのカドミウム吸収を抑制する。

③「客土」
カドミウム濃度の低い土壌を盛り土する。

このうち、いま話題となっているのは①「カドミウム低吸収性イネの利用」についてです。

「放射線育種(変異誘発育種)」とは

放射線育種と交配育種は、両方とも植物の品種改良に使用される方法ですが、その手法と目的には大きな違いがあります。

放射線育種は、植物に放射線(x線、γ線、電子線、イオンビームなど)を照射することにより、遺伝子を変化させたり、壊したりすることで突然変異を生じさせ、形質が様々に変化した突然変異帯の中から有用な形質を持つものを選抜する品種改良法です。
この技術は、1950年代から利用されており、日本の農業において重要な役割を果たしています。

下記は、放射線育種で誕生した品種の例となります。

レイメイ:1966年に登録された品種で、耐冷性を持ち、草丈が低く、倒伏しにくい特性を持っています。

キヌヒカリ:1989年に登録された品種で、放射線育種で開発された系統を利用しています。

コシヒカリ環1号:2015年に登録された品種で、イオンビームを照射して作られ、カドミウムをあまり吸収しない特性を持っています。

「交配育種」とは

交配育種は、二つの品種を交配し、得られた実生(みしょう:種子から発芽し、成長した植物体)の中から両親の優れた特性を併せ持ったものを選抜する方法です。

例えば、コメでは「コシヒカリ」や「あきたこまち」のような品種が交配育種により作られました。

それぞれの目的とメリット

放射線育種と交配育種は、それぞれ異なる目的とメリットを持っています。

放射線育種の主な目的は、特定の特性(着色性、成熟期等)のみを変異させることです。そのほかの特性は既存品種と同様のため、有用な変異であれば普及しやすいといえます。
放射線育種は、自然界で突然変異が起こる確率を大幅に高め、品種改良の時間と手間を省くことができるメリットがあります。

一方で、交配育種は、二つの品種の優れた特性を組み合わせることができ、新しい品種を作り出すことが可能です。
しかし、F1品種から採種した種(F2)は劣性の形質が出るため自家採種には不向きです。

おわりに

このような背景から、カドミウム低吸収稲の開発は技術的に重要な意味を持ちます。 そのため、お米を取り巻く状況を鑑みれば、放射線育種について否定をすることもできません。
一方で、放射線育種は、未来永劫安全であるかはわからない部分もあり、専門家の間でも議論が分かれています。

わたしたちが大切にしたいのは、どちらのお米を食べるかを自分たちで選択できることです。

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