2025/07/15 09:50
古古古米(こここまい)の試食に関するおことわり
さて、今回のテーマは「古古古米(こここまい)」について。
令和の米騒動は、いまだ収拾がつかないまま。
そんな中、備蓄米の大量放出が行われ、その動向や味について話題が尽きません。
政府による随意契約での備蓄米売渡しの申込受付が始まった2025年5月26日以降、備蓄米の購入がまるでブームのようにメディアで取り上げられるようになりました。
私たちのお店では、普段「備蓄米」や古古古米のような長期保管米に出会う機会はありません。ですが、米屋としてその実態を知っておく必要があると思い、関心を寄せていました。
とはいえ、本当に困っている方々が優先して購入できるべきだという思いから、私たちはすぐには手を出さず、試食もせずに7月を迎えました。
ところが7月に入ると、状況は少し変わってきます。
近隣のスーパーなどでも備蓄米が山積みになり、「備蓄米が買えない」というほどの品薄感はなくなりつつあるようでした。
また、各店2袋までと公表されていたコンビニエンスストアでも、実際には2袋以上の在庫が見られるようになり、私たちも「今なら試してみてもよいかもしれない」と考え、いよいよ古古古米を食べてみることにしたのです。
ファミリーマートの備蓄米

実際に購入した備蓄米
私たちが購入したのは、コンビニエンスストア「ファミリーマート」の令和3年産の備蓄米1kg、388円(税込)です。
複数原料米ということで、産地や品種の記載はありません。
売場での第一声は「黄色いなぁ」
袋を手に取ったとき、精米したてにもかかわらず、お米の白さが損なわれていることに目が行きました。複数原料米なので特定の品種とは比べられないものの、通常の商品としてはなかなか厳しい見た目だと感じました。米穀店の仲間たちが「古古古米はちょっと…」と口をそろえるのも納得です。食べる前から正直、不安がよぎりました。
袋を開けた瞬間、強烈な古米臭が立ちのぼります。お米を洗うためにボウルへと移すときも、鼻をつく古米特有の匂いが感じられました。これは、主にお米に付着している糠の脂分が酸化することで発生する匂いです。
前年産のお米と新米をはっきり区別できる日本人にとっては、すぐに気づくほどの変化だと思います。
炊き上がりは白いが…

炊き立ての備蓄米
通常通りに洗米し、浸水後に炊飯しました。炊き上がりの香りはさほど強くはなく、見た目は白いもののツヤがありません。しかし、いざ食べてみると——
お米本来の甘みや旨みが乏しく、歯を押し返すような弾力や粘りもほとんど感じられません。口に入れた瞬間はパサついていて、ごわごわとした食感が口の中で崩れ、古米臭の後味が残りました。
パックごはん特有の嫌な香りが近いイメージです。
普段から美味しいお米を追い求め、品質の高いお米をつくる生産者の方々と共にお米業界を盛り上げたいと思っている私たちにとって、正直、日常的に食べるには受け入れがたい品質だと感じました。
改めて、普段食べるお米はその年に収穫された新鮮で美味しいものであることが、日本人の食を通じた幸福度にとって大切なのだと痛感します。
さいごに
安価な備蓄米の流通によって、日々の食費に悩む家庭にとっては大きな助けになっているのも事実ですし、「このくらいの味なら問題ない」と感じる方がいるのも当然のことだと思います。
ただ、私たちは“お米の専門家”として、そして日々「美味しいお米を選びたい」と思ってくださるお客様に向き合う米屋として、やはりその年に収穫された新鮮で美味しいお米をおすすめしたい気持ちは変わりません。
お米は単なる主食ではなく、季節や生産者の努力、地域の風土と結びついた「文化」そのものです。
その文化を次の世代につないでいくためにも、品質の良いお米が適正な価格で流通し、きちんと評価される社会であってほしいと、改めて感じた試食体験でした。
そして、こういったお米に対する想いに共感してくださるお客様が、少しずつでも確実に増えてきていることを、私たちはとても心強く感じています。これからも品質向上に努め、生産者の魅力をしっかりとお伝えしながら、美味しいお米をお届けしていきたいと思います。